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第28話 「コーポレートガバナンス・コード」と中小企業(後編)

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4.気候変動への対応が中小企業にも!?

(1)TCFDとは

コーポレートガバナンス・コード(CGコード)は、プライム市場上場会社に対し、次の対応を求めています。

…(前略)… 気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。

コーポレートガバナンス・コード 補充原則3-1③

後半にある「TCFDまたはそれと同等の枠組み」というのがポイントです。TCFDとは、「気候関連財務情報開示タスクフォース」のことで、気候変動リスクが企業の財務に与える影響をきちんと開示させる、そうした目的をもった国際的な組織・枠組みをいいます。たとえば、食品関連の会社であれば、雨量の増加や気温の上昇は農作物の生産に大きな影響を与えますが、そうした影響が会社の製造コストに与えるインパクトがどうなるか、といったことをシミュレーションし、それを開示する、という取組みとなります。

このTCFDの提言は、気候変動の原因となる二酸化炭素など温室効果ガスの排出量の削減についても取組みを促します。排出量の把握の仕方としては、自社の製品の製造やサービスの提供に必要な燃料(Scope1)や電力消費(Scope2)に伴う二酸化炭素の排出量のほか、その製造の原材料を製造した場合、あるいは消費者が製品の使用し、廃棄した場合(Scope3)などでの排出量についても把握する方法が一般的であり(Scope1~3をあわせて「サプライチェーン排出量」といいます。下図参照。)、上場会社においてはこれら排出量の把握・削減の取組みを開示するが求められることになります。

出所:環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム サプライチェーン排出量 詳細資料 
(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate_tool.html#no00)

(2)中小企業への影響

CGコードの改正により、原材料を提供する取引先(中小企業)がどのくらい排出していることになるのか、上場会社にとっては関心の高い事柄となり、取引先に対する把握の動きが高まることが想定されます。あるいはすでにそうした動きは皆様のところで始まっているかもしれません。もっとも、プライム市場上場会社にとっても、そうした体制を整えるのに苦慮している状況のようではありますが、今後その質や量が充実していくことが期待されています。

こうした気候変動へ対応は、国際標準ではもはや避けては通れない潮流となっています。取引所のCGコードにわざわざ「TCFDまたはそれと同等の枠組み」と具体的な基準を設けたことは、上場会社とそのサプライチェーンを通じた経路により環境課題の解決を図ろうと、当局が本腰を入れてきている現れと読み取ることができそうです。

このような状況下において、「適切な協働に努めるべき」とされている上場会社が、取引先に対し、闇雲に排出量の把握を求めてくることはないとは思われます。実際にサプライヤーとの良好な関係のもと排出量の把握・啓蒙に努めている会社もありますし、金融機関もそうした対応への支援を設け始めています。逆にいえば、排出量の把握・削減に積極的な企業ほど、CGコードを意識している上場会社にとっては、取引しやすい相手と映る可能性があります。競合他社との差別化の一つとして、他社に先駆けてこうした排出量の把握・削減に努め、さらにこれらの実施をアピールすることは、競争優位に立つための経営戦略のひとつになると思われます。

5.おわりに

昨今の世の中の動きとともにCGコードについて概要をご紹介しました。CGコードは間接的な形ではありますが、中小企業の皆様にも影響が及びうることが分かります。折に触れて意識をし、経営の方向性を考える際の参考にしてみてください。CGコード対応の上場会社との取引、環境対応でお困りでしたら、KSFへお問い合わせください。

中小企業診断士 大森 達弥

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