中小企業診断士のビジネスユニット KSF

第26話 通信費を削減する2つのポイント

企業が利益を確保・向上させるためには、①売上拡大、②経費削減の2つの観点で取り組む必要があります。一方で、昨今は新型コロナウイルス対策を契機にテレワークが進み、経費の一つである「通信費」の増大に頭を悩ませている企業も多いのではないでしょうか。

そこで今回は「通信費を削減する2つのポイント」についてご紹介します。

①固定電話回線・インターネット回線

携帯電話・スマートフォンの普及により、固定電話の需要は年々減少傾向です。ただ中小企業にとっては代表番号やFAX通信など、まだまだ利用シーンは多いです。

固定電話回線は、一般的にアナログ、ISDNといったメタル回線を契約します。これらは音声通話やFAX通信用の回線網であるPSTN(Public Switched Telephone Network:公衆交換電話網)に繋がっています。現在のPSTNは1980年後半より整備され、「安定した通話品質」と「日本全国どこでも契約可能な間口の広さ」から、個人・商用問わず広く利用されています。ただ、通信事業者(通称キャリア、以下キャリア)にとっては、古い設備の維持コストが大きな負担となっており、基本料・通話料は割高に設定されています。

そのため個人や中小企業においては、近年インターネット用光回線で音声通信を行う「IP電話」が主流となりつつあります。

図1: キャリア内ネットワークのイメージ

IP電話は同時に多くの通話を処理できるため、回線数を減らし基本料金を抑えることが出来ます。また通話料も「全国一律の通話料金」「IP電話同士は無料」など安価に設定されていることが多いです。PSTNと比べると雑音が少なく、現在の電話番号もそのまま利用可能です。

黎明期(2000年代前半)は音の途切れや遅延がひどく、「ビジネスでは使えない」という評価でしたが、技術の進歩やサービス革新により品質が大きく改善すると、徐々に普及が進みました。総務省の統計データ(図2)によると、IP電話契約数(2019年)は固定電話契約数全体の65.6%にも上っています。

図2: 固定電話の加入契約者数の推移

引用元:総務省『令和2年版 情報通信白書|提供状況』
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd252210.html

今では加入者の増加により「IP電話同士の通話料無料」などのメリットが拡大し、さらに加入者が増える好循環となっています。今後もIP電話への移行が進むものと想定されるため、まだIP電話を利用していない場合は一度検討してみるとよいかと思います。

②法人向け携帯電話・スマートフォン

テレワークの浸透により、従業員に携帯電話・スマートフォンを支給している中小企業も多いと思います。そのため社内通話が多い業種では、オフィス固定電話との通話や従業員同士の携帯通話など、通話料の負担が増大しているケースも多数見受けられます。

携帯電話・スマートフォンの経費削減方法は、「プランの見直し」や「契約キャリアの変更」が一般的です。どのキャリアも「無料通話/定額通話」「ビジネス割引」など様々な割引サービスを提供しており、固定電話と携帯電話を同じキャリアに統一すれば「セット割」が適用されるケースもあります。その中で近年注目されているのは、MVNO(Mobile Virtual Network Operator)を活用する方法です。

MVMOとは、大手通信キャリアから回線網を借用し、自社ブランドで通信サービスを提供するキャリア、または当該通信サービスそのものを指します(「格安SIM」とも呼ばれます)。契約数は増加傾向で、総務省の統計データ(図3)によると2016年から2020年までのたった4年間で2倍近い伸びとなっています(携帯電話・PHS・BWAの合計。BWAは屋外無線LANサービスの総称)。

図3: MVNO(MNOであるMVNOを除く)
サービスの契約数の推移

引用元:総務省『令和2年版 情報通信白書|提供状況』
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd252210.html

MVMOは自社で回線網を持たず維持コストを抑えられるため、安価な価格設定となっています。そのため、中小企業にとっても魅力的な選択肢のひとつとなっています。

自社にとって最適な削減方法とは?

通信費を削減する方法は様々ですが、それぞれメリットとデメリットがあります。例えば今回ご紹介した削減方法においても、光回線はメタル回線に比べて導入費用が高かったり、MVNOも提供エリアや利用端末に制限があったり、といったデメリットが挙げられます。他にも、2025年を目途にPSTNのIP化(PSTNマイグレーション)が計画されており、今までにない新しいサービスの登場が期待されています。

このような状況下において、自社にとってベストな改善策を導き出すには、各キャリアの最新情報を収集して比較検討することが非常に重要です。ただ、中小企業の限られた経営資源の中で実行していくのはなかなか大変です。KSFでは、様々な経験やノウハウを持つ中小企業診断士が多数在籍しており、キャリアの比較や最適な削減方法検討のご支援も可能です。

通信費削減でお困りのことがあれば、是非KSFまでお声がけください。

中小企業診断士 枝松 雄太

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