2020年に広まった新型コロナウイルス感染症により、大企業にも中小企業にも大きな影響がでました。また、今度いつ自然災害などが起こるか分かりません。
自然災害や感染症など様々なリスクに備え、事業を継続する力をつけるために、中小企業庁が進める「事業継続力強化計画」策定をしてみてはいかがでしょうか。「事業継続力強化計画」が認定されると、税制優遇などの支援措置を受けることができます。
本コラムでは、「事業継続力強化計画」の基本的内容についてご説明します。
1.「事業継続力強化計画」とは
「事業継続力強化計画」とは、中小企業の自然災害に対する事前対策(防災・減災対策)の促進を目的とし、令和元年7月からスタートしました。「防災・減災の事前対策」に関して中小企業が計画を立て、それを経済産業大臣が認定する制度です。認定されると、税制優遇や金融支援、補助金の加点などの支援を受けることができます。
【認定された場合の支援措置内容】
○税制優遇 | 「事業継続力強化計画」に従って取得した一定の防災・減災設備等について取得価額の20%の特別償却が適用される |
○金融支援 | 日本政策金融公庫による低利融資、信用保証枠の拡大等 |
○予算支援 | 認定された場合、ものづくり補助金等の一部の補助金において審査の際に、加点される |
2.「事業継続力強化計画」の内容
「事業継続力強化計画」は、中小企業が防災・減災対策に必要な取組を計画するものです。
中小企業庁の「事業継続力強化計画策定の手引き」に書かれている、5つのステップを踏まえ、計画にあたって検討する内容をご紹介します。
①事業継続力強化の目的の検討
まずは、「何のために取り組むか」を明らかにすることから始まります。災害や感染症が起こると、従業員とその家族だけでなく、地域の方々、顧客や取引先にも大きな影響を与えます。自社が地域経済やサプライチェーンにおいて、どのような影響を与えるかを想定し、それらをどう軽減していくかの観点で作成していきます。
②災害リスクの確認・認識
地域のハザードマップなどを確認し、会社や事業所、工場等がある地域の災害の特徴を確認します。地震だけでなく、大雨、洪水、氾濫等が起きた場合の想定被害や、避難場所なども確認します。また、「人員」と「建物・設備」に分けて、想定される影響を確認します。
③初動対応の検討
災害が発生した直後の初動対応について検討します。
・人命の安全確保
・安否確認の方法
・緊急時の体制
・設備の損傷等の把握・共有
これらについて、事前に取り決めておき、社内で事前に共有しておきます。
④人、モノ、カネ、情報への対応
自社の考えられる災害リスクから、どのような対応が必要かを検討します。例えば以下のような対応です。人、モノ、カネ、情報の4つの切り口で考えると、抜け漏れを防ぐことができます。
・1人の人が複数の業務ができるように多能工化する
・洪水が考えられる場合、重要書類やPC類を2階以上に移す
・デスクトップPCだけでなく、ノートPCで作業できるよう環境を整える
・運転資金を1~2か月確保する
・情報をバックアップする
⑤平時の推進体制
「事業継続力強化計画」は策定するだけで終わりではありません。有事の際に実行できるよう、平時から経営者が強い意志をもって取り組む意義を従業員に伝えていく必要があります。また、「計画」した内容に沿って、出来ることから取り組んでいきます。具体的には、以下のようなことが考えられます。
・朝礼等を通じた啓蒙活動
・年に一回以上の訓練活動
・「計画」の見直し
・顧客リストや社員リストなどの更新
これらの事を、検討し所定の書式に計画を記入していきます。すべてを記入できれば、「事業継続力強化計画書」、チェックリスト、既に策定している場合はBCPなどの参考資料、返信用封筒を同封し、各都道府県の経済産業局等に郵送してください。
さらに詳細を確認する場合は、中小企業庁の「事業継続力強化計画策定の手引き」をご参照ください。令和2年6月15日版(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/2020/kyoka_tebiki.pdf)
事業継続力強化計画でお困りならKSFにお声がけください。
中小企業診断士 百中 さおり