「適正」な借入金額とはどれくらいなのでしょうか?財務会計の教科書的にいえば、「負債利子の節税効果と財務的破綻コストの二者を最適化する水準」ということになるのでしょうが、何か抽象的で、実務的ではないような感じがします。
実務的な話として、金融機関の担当者がよく使う指標に「借入金の収益償還年数」というものがあります。簡単にいえば、「借入金が何年で返済できるか」ということですが、具体的には以下の通りで算出します。
借入金の収益償還年数=(総借入金-現預金-正常運転資金(*))÷(経常利益-税金等+減価償却費)
(*)正常運転資金=(受取手形+売掛金+在庫)-(支払手形+買掛金)(但し、不良分を除く)
この式について補足説明させて頂きますと、分子の「借入金」については、収益償還するべき借入金額を算出します。すなわち、総借入金から、①実質両建となっている現預金と②本来は営業サイクルの金繰りで返済されるべき(収益償還されるべきではない)運転資金を控除します。
また、分母の「収益」については、経常的に得られているキャッシュフローを算出します。すなわち、経常利益から、①社外流出する法人税等を控除し②資金支出の伴わない減価償却費を足し戻します。
それでは、この「借入金の収益償還年数」が何年であれば「適正」なのでしょうか?理論上、分子の「借入金」は、設備資金借入ということになります。したがって、一般的には、保有している設備(有形固定資産)の経済的な耐用年数(税法上の法定耐用年数とは異なり、実質的な設備の回収期間)の範囲内であれば「適正」といえると思います。更に踏み込んでいえば、金融機関としては、この「借入金の収益償還年数」が10年程度に収まれば適正な水準と考えます。この10年に明確な根拠はありませんが、金融機関において長期借入金の融資返済期間は10年程度とされていることに起因します。すなわち、融資返済期間で返済可能(融資返済期間の延長は不要)と考えるのです。
いかがでしたか?我々、企業内診断士フォーラム(KSF)には、皆さまの財務上のお悩みを解決できる専門家が多数在籍しております。何なりとお問い合わせください。
中小企業診断士 髙橋範行