昔の「オイルショック」やリーマンショック後の原油高の時は大騒ぎになったが、今やコストは落ち着き気味の火力発電(CO2排出は多め)。再稼働によりエネルギーの低コスト化に貢献すると言われている原子力発電。かたや設備が高価で「金食い虫」と言われている太陽光発電。いろんな発電の方式があるが、世界ではこれらを「均等化エネルギー(発電)コスト(LCOE、levelized cost of energy/ electricity)」という指標により、相互比較して本当に安いエネルギーを選ぼうとしている。LCOEは概ね以下の計算式で定義されるが、注釈にある通り、エネルギー源によって影響する因子が異なっている。
それぞれのパラメータは、下記の式で示される。割引率(発電事業者の場合はWACC(加重平均資本コスト)などを適用)により、将来価値(費用面、アウトプット面)を現時点に換算して積み上げている。
(ただし、
It=t年目における資本投資コスト(円/年)、
Mt=t年目における維持管理コスト(円/年)、
Ft=t年目における燃料コスト(円/年)、
Et=t年目における発電量(kWh/年)、
r=割引率(小数表示)、
n=発電システム寿命(稼働期間)(年))
世界の多くの機関がLCOEを計算しているが、国際的な金融サービスのLazardによると、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーが、石炭火力や原子力発電、コンバインドサイクル発電などの従来型発電技術を押さえて最安のコストで発電できている、と報告している。中でも、太陽光発電は2009年には359ドル/MWh(35.9セント/kWh)とダントツで高コストのエネルギーであったが、2018年には88%も下落して43ドル/MWh(4.3セント/kWh)と、風力発電(4.2セント/kWh)と肩を並べるレベルまで安くなった。
日射量の違いなど、地域的に多少のコスト差はあるものの、世界各地で太陽光発電や風力発電のコストパフォーマンスが認識されており、補助金や電力買取制度から卒業する事例も出てきている。今後蓄電技術が普及して廉価になることで、これら再生可能エネルギーが従来型エネルギーに取って代わる時代が目前に来ている。自分の使うエネルギーは、自分で発電する“地産地消”のスタイルにつながり、ゆくゆくはSDGs(持続可能な開発目標)への貢献につながる。
中小企業診断士 大東 威司