「ビッグデータ」「IoT」「AI」などの様々な用語とともに、ビジネスにおける「データ活用」がここ数年注目されています。その一方「データ活用の何が良いのかわからない」「なんだか難しそうで手が出せない」とお思いの方も多いのではないでしょうか。今回のコラムでは「データ活用」についてご紹介します。
■データ活用とは
ビジネスにおけるデータ活用とは、
- 社内・社外のデータを取得・蓄積
- データを分析
- 分析結果をもとに経営や事業を判断
する一連の活動を指します。
■データ活用の目指すべき姿
データ活用の目指すべき姿は「判断基準の明確化」にあります。
例えば、新規顧客を開拓しようとするとき、同じ見込み顧客リストを渡してもベテランの営業担当と新人の営業担当が異なる会社を選ぶことがあります。この時、ベテランの営業担当は、「過去の経験」から可能性の高い顧客を選んでいます。この「過去の経験」と曖昧にされていた部分を、「データで判断」できるようになることが、データ活用のゴールです。
■データ活用のメリット
データ活用によるメリットは大きく2つあります。
- 「データ」による判断基準を明確化することができれば、若手社員であってもベテラン社員と同じ判断が可能になります。
- 「データ」にすることで、思い込みと異なる事実が明らかになることがあります。ベテラン社員の言う「過去の経験」は、彼の顧客にしか当てはまらない特別な条件かもしれません。「経験」は主観ですが、「データ」は人によって変わることのない事実です。
■始めてみようデータ活用
ここから、データ活用の基本ステップをご紹介します。
1.目的=何を判断したいかを定める
まず、データ活用の目的を定めましょう。今回は、例として「新規顧客開拓において、見込み顧客を判断する」とします。
2.目的に応じた仮説と必要なデータを考える
「見込み顧客の判断」を実現するために、判断基準の仮説と必要なデータを考えます。
判断基準の仮説:既存顧客と「同じ特性」を持っているかどうか
必要なデータ:既存顧客の特性を表すもの
顧客が個人消費者の場合、年代・性別・住まい・職業などは、すぐに思いつくデータでしょう。その他、購入の多い商品・サービス、自社を選択したきっかけ、購入の多い時期や曜日など、アプローチする切り口なども重要です。まずは幅広く「必要なデータ」を考えてみてください。
3.データを取得・蓄積する
これまでの企業活動の中で「必要なデータ」が取得できていればいいですが、そうでない場合がほとんどです。データを取得する方法を考えましょう。既存顧客のデータであれば、アンケートの実施などで収集することもできます。
データの蓄積について、データ量の少ないうちはExcelなどで十分です。ただし、必ず1箇所に集め、いつどうやって取得したデータかを明確にしておきましょう。せっかく手間暇をかけて集めたデータが管理されておらず、結局使えなくなってしまった…ということは避けたいですね。
4.データを分析する
蓄積したデータについて分析します。今回のケースでは、「既存顧客の特性」を表すデータ項目がどれか、あたりをつけましょう。
複数のデータの相関を確認する「相関分析」、データの分布を見る「度数分布(ヒストグラム)」などはExcelでも十分可能です。更に人では気づかないような関係性を見つけるため、BIツールと呼ばれる専用ツールもあります。Excelでは物足りなくなってきた、簡単にビジュアル化したいなど、やりたいことが具体的になってから段階的に導入できます。
5.判断基準の精度を上げる
分析した結果から「可能性の高い見込み顧客」を判断し、アプローチを実施します。第1回のアプローチ自体は、必ず成功するとは申し上げられません。最も重要なのは、対策の実施結果をデータとして蓄積することです。うまく行かなかった場合、あたりをつけた項目が違うのでしょうか。それともデータ自体が少なく、判断が誤ったのでしょうか。失敗となった原因を考え、そのためのデータ取得・蓄積・分析と仮説の見直しを繰り返し、判断基準をよりよいものにしていきましょう。
データを取得・蓄積し続けることで、市場・顧客の変化がデータに現れます。更に天気や景気動向など、外部データとの組み合わせにより、また新しい発見が生まれます。いずれデータが、自社の判断に欠かせない財産となっていきます。
まずはデータで何を判断したいか、考えてみることから始めてみませんか。
データ活用にご興味がありましたら、是非企業内診断士フォーラムにお問い合わせください。
中小企業診断士 井上 あゆみ