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第23話 3C分析の進め方

3C分析と呼ばれるフレームワークがあります。Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つのCの視点から分析を行うものです。マーケティングや企業分析の書籍には必ず載っている、有名な手法です。

この3つの視点を押えておけば、マーケティングに必要な要素は「漏れなく、ダブりなく」押えたとされます。いわゆる、”MECE(ミッシー)[i]”と言われる状態です。

では、この3つの視点、どの順番で分析を進めていけば良いのでしょうか。

マーケティングは「お客様が求めているものは何か」という顧客視点が重要だと言われます。そうなるとCustomer(市場・顧客)から分析を始めるのだと考える方が多いのではないかと思います。実際、多くのマーケティング本には「顧客分析から始めよ」と書いてあります。「顧客 ⇒ 競合 ⇒ 自社 の順番で分析するのがセオリー」と断言している本もありました。

しかし私は、Company(自社)から始めるべきだと考えています。

確かに「お客様が求めているもの」を知るのは大切です。お客様を無視して、自分勝手な商品やサービスを提供しても受け入れられないとは思います。モノが不足していた時代は、作れば売れました。お客様は多少の不満はあっても「ないよりあったほうがいい」と思う時代でした。それが、モノがあふれる時代になってくると、お客様の選別する目は厳しくなります。お客様の声に耳を傾け、ニーズをつかんでそれにあわせた商品・サービスを提供していかなくては買ってもらえなくなりました。いわゆる「プロダクトアウトからマーケットインへ」と考えるようになったのは当然の流れです。

しかし、さらに時代が進んだ現代、ほとんどの会社が市場調査を行っています。デジタルの発展に伴い、市場調査のためのツールも豊富にあり、以前よりも手軽に調査が行えるようになっています。

その結果、どの会社も「同じ顧客」の声を聞くことになります。それに基づいて製品開発を行えば、金太郎飴のような製品があふれかえってしまいます。

いま企業に求められるのは「差別化」だと言われます。他社との違いをどう提示していくのか、が問われます。同じお客様の声を聞いていては、他社との違いを出すことは困難です。

差別化の源泉は自社(Company)の中にあります。自分たちはなにを目指す会社なのか。なにをするために設立された会社なのか。経営理念を中心据えつつ、現在の自分たちが持っているリソースでなにができるかを考え、そうして生まれてきたアイデアが、差別化可能性を秘めて商品・サービスの種になり得るのです。

ここまで来てから、自分たちが提供できるものの中で、似たようなことをすでにしている競合他社(Competitor)はあるか、お客様(Customer)に受けてもらえるのはどれか、と検討を進めていくのは「差別化」を意識するならベストな方法だと思います。

よく言われる例ですが、お客様の声を聞いていたならiPhone は生まれてこなかったはずです。スマートフォンを見たことがないお客様をいくら調査しても、iPhone のアイデアは出てこなかったからです。

この考え方は、オーソドックスなセオリーとは違うため、戸惑われる方もいるかもしれません。もっと詳しく知りたいと思われた方は、KSF(企業内診断士フォーラム)までお問い合わせください。セミナー形式での説明も可能です。

中業企業診断士/事業承継マネージャー 中郡 久雄


[i] Mutually(お互いに)、Exclusive(重複せず)、Collectively(全体に)、Exhaustive(漏れがない)の頭文字をとった略語

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