中小企業診断士のビジネスユニット KSF

第19話 中小飲食店経営における省エネについて

1.はじめに

新型コロナウイルス感染症の影響により、飲食店経営はかつてないほど厳しい環境下にあります。営業自粛等により売上向上が見込めない状況においては、省エネ等の取り組みを推進することでコストダウンを図り、少しでも収益改善していくことが重要になります。

本コラムではすぐにでもできる省エネの取り組みを紹介していきます。

2.まずは現状分析

ダイエットにおける体重測定効果というのをご存知でしょうか?  毎日、体重を測定し記録し続けることで体重に対する意識が高まり、結果として適正な体重を維持しやすくなる、というものです。

省エネの取り組みも同様です。まずは毎月の使用量をガス・電気の検針票から確認し、グラフに書き出すことで現状の「見える化」をしましょう。例えば前年同月の使用量を比較する等により、エネルギーの使いすぎやムダを意識できるようになり、結果として省エネ・コストダウンに繋がります。

3.どこをカイゼンすればよいか

エネルギーの「見える化」をすることで店舗全体の使用量を把握することができますが、個別にはどこをカイゼンすれば効果的なのでしょうか?

一般的に飲食店のエネルギー使用量は電気が約80%を占め、ついでガス・水道になります。 また、電気のうち、一般的に厨房機器等、照明、空調、換気の順番で使用量が多いため、使用量の多い設備から優先順位をつけてカイゼンするのがよいでしょう。

少し投資が必要になりますが、消費電力量を計測できる機能が付いたコンセント等を活用すれば、設備単位で個別に詳細な使用量を計測することも可能です。

4.具体的な省エネポイント

4.1 厨房機器

冷凍冷蔵庫

  • ドアの開閉回数の削減:食材はすばやく出し入れし、何度も開閉しないようにしましょう。
  • パッキンの破損確認:扉のパッキンが破損しているとエネルギー使用量が上がります。
  • フィルターの清掃:フィルターが目詰まりしていると効率が悪くなります
  • 庫内の詰め過ぎ・片詰め回避:効率が悪くなり余計なエネルギーを使います
  • 温かい食材は冷ましてから入庫:余計なエネルギーを使わないよう常温になるまで冷ましてから入庫しましょう

給湯器

  • 適正温度:設定温度が高すぎる場合、40℃程度に設定することで省エネになります。
  • 省エネ機器への更新:設備投資が必要になりますが、設備更新のタイミングで省エネ機器に取り替えましょう。潜熱回収型給湯器という省エネ機器であればエネルギー使用量を15%程度削減することができます。

ガスコンロ

  • 鍋の水滴をふき取る:鍋の水滴をふき取ってから火にかけることで熱効率が向上します。
  • 炎あふれの防止:ガスコンロの炎が鍋からはみでないようにしましょう。
  • 省エネ機器への更新:設備投資が必要になりますが、設備更新のタイミングで省エネ機器に取り替えましょう。内炎式バーナーのコンロであれば炎あふれが少なく省エネです。

グリドル・フライヤー・オーブン等

  • メンテナンス・修理:ガス事業者等に定期的にメンテナンスを依頼し、性能を維持しましょう。

4.2 照明

  • スイッチングルールの設定:スイッチにカラーラベルを貼り付け。エリアごと、時間ごとに点灯・消灯のルールを設定しましょう。
  • 省エネ機器への更新:設備投資が必要になりますが、LED照明等の高効率な照明に取り替えましょう。

4.3 換気・空調

  • フィルターの清掃:定期的にフィルターを清掃するようルール化しましょう。
  • 適正換気:過剰な換気は外気流入により空調負荷の増大に繋がり、エネルギーのムダ使いになります。
  • 適正温度:夏季は26℃、冬季は22℃を目安に設定温度を適正化しましょう。
  • 省エネ機器への更新:設備投資が必要になりますが、最新の空調機に取り替えることで大幅な省エネになります。

5.最後に

省エネの取り組みは着実にコストダウン・収益改善に繋がります。継続的な取り組みとなるよう、チェックリストの運用等で定着化を図ることが重要です。いますぐ省エネを実践し経営力を強化していきましょう。

中小企業診断士 辻 英之

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