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第13話 ITベンダーへシステムを発注する時のポイント

近年、ITベンダーのホームページからダウンロードしてすぐに使える業務用ソフトウェア製品が増え、中小企業にとってIT導入のハードルがかなり下がりました。

シンプルな作業を肩代わりする程度なら導入後すぐに使い始めることもできます。しかし、複雑な作業をまとめてシステム化したい場合や企業独自ノウハウをシステムに組み込みたい場合は、自前でシステム化することは難しく、ITベンダーへシステム開発を依頼することになります。

10年前から比べると改善したとはいえ、今でもシステム開発の半分はQ(品質)C(コスト)D(納期)のどれかで失敗しています。そこで、ITベンダーへシステム化を依頼する時にトラブルを避け、満足してシステムを使い始めるために最低限必要なポイントを紹介いたします。

1.要件は必ず書面で伝える

小さいシステムの場合でもITベンダーへ見積依頼する時は、口頭ではなく必ず書面で要件を伝えしょう。システムで実現したいことを正しく伝えることが目的ですが、書くことによって、「どんなシステムをいつまでに、いくらで作って欲しいのか」を具体的に整理できる効果があります。

見積依頼でよく使う書類としてRFP(提案依頼書)があります。RFPに書く内容は大体、下の表の様になります。インターネットを調べると様々な様式があり、自分で作成することは可能ですが、要望を漏れなく伝え切るにはITの専門家にお願いした方が無難です。

背景・目的システム化が必要な理由
前提・制約条件システム化する上で考慮しなければいけない条件
(納期・予算・利用者・自社のシステム環境・遵守すべき法令 等)
要件システム化する事柄(機能要件)
セキュリティ・性能・使いやすさに関する事柄(非機能要件)
発注範囲ITベンダーへお願いすること
その他納品前確認(試験)・教育・コミュニケーション方法

2.発注側とベンダー間の責任分担を明確にする

プログラムの完成やパッケージの購入だけではシステムは動きません。

他にも端末(PC・タブレット・スマホ 等)、付属設備、ネットワーク、データ、適切な設定、使う人への教育、故障時の対応方法の全てが整って初めてシステムが使える様になります。

次に挙げるものは、責任分担が曖昧になりがちです。後でトラブルや想定外作業の発生につながりますので、RFP作成と共に整理し明記しておく必要があります。

ハード面・端末(PC・タブレット・スマホ)の購入
・ネットワーク・回線の敷設
・付属設備の手配
・旧端末や設備の撤去や処分
ソフト面・端末やネットワークの設定作業
・回線等の契約・解約手続き
・データ整備・投入作業
・教育やマニュアル作成

3.ITベンダーに丸投げせずしっかり向き合う

「要件は伝えた。契約も交わした。あとはITベンダーに丸投げ!」としたいところですが、ITベンダーは発注者側の詳しい業務内容、業界の常識や滅多にない例外等の書面に記載されないことは分かりません。失敗原因の多くは発注側が主体で行う「要件定義」のまずさにあります。要望通りのシステムを確実に納品してもらうには、時間を十分に確保してITベンダーとしっかり向き合いましょう。

要件定義や設計では書面に記載されない行間を埋め、ITベンダーに要件を正確に理解してもらい、責任分担を確認するために、実際にシステムを使う人を交えてITベンダーとの打ち合わせの場を設けましょう。その際、十分な時間を確保することが大事です。打合せ後は簡単な形式でも議事録を必ず残しましょう。

設計終了後も定期的にITベンダーとコンタクトをとる必要があります。進捗状況を把握できるとともに、問題が発生しても早期解決を図れます。

本業に充てるべき時間が割かれるため案外簡単なことではありません。それでも、ITベンダーとの信頼関係を築き、満足度の高いシステムを受け取るために是非実行してみてください。

中小企業診断士 松本 恭子

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