中小企業診断士のビジネスユニット KSF

第11話 NPO法人の経営支援について

■中小企業診断士の経営支援の対象拡大

 中小企業診断士が経営支援をする対象は中小企業だけではないことをご存じでしょうか?

 令和元年7月から、中小企業診断士の新規及び更新登録の要件となっている実務従事の対象が拡大されました。一定の要件を満たす「医業又は歯科医業を主たる事業とする法人(医療法人等)」、「社会福祉法人」、そして「特定非営利活動法人(NPO法人)」が新たに追加されたのです。

■NPO法人が社会に果たす役割

 では、なぜ、中小企業診断士の実務従事の対象がNPO法人にも拡大されたのでしょうか。

 それは、NPO法人が社会に果たす役割が大きいからではないか、と考えられます。現在、認証を受けているNPO法人数は約5万法人で推移しています。これだけ多くの法人がサービスの提供、購入、雇用、納税など、経済活動の主体として存在しているのです。これらの活動は、企業と同様に、事業を拡大すればするほど大きな経済効果をもたらすことから、NPO法人への経営支援の重要性が認識され、対象拡大につながったと考えられます。

 加えて、NPO法人は、事業内容そのものに公益性がある点でも社会にとって重要な役割を果たしています。NPO法人は、「政府の失敗」「市場の失敗」によって生じた社会課題の解決や価値創造の担い手として期待されています。

■NPO法人が抱える課題(企業と共通すること、異なること)

 NPO法人が抱えている課題には、企業と共通することと、NPO法人ならではのものがあります。

 内閣府の「平成29年度 特定非営利活動法人に関する実態調査報告書」によると、NPO法人の抱える課題は「人材の確保や教育」(66.9%)、「収入源の多様化」(54.2%)の順に多くなっており、一般企業と同じような課題を抱えていると思われます。

 一方、NPO法人ならではの課題もあります。「法人の事業運営力の向上」(36.0%)は、本業とは別に活動していて事業運営に時間を使える人が少なかったり、企業従事経験のない人が法人運営を行っていたりするNPO法人の特徴により生まれた課題と考えられます。また、「一般向け広報の充実」(17.6%)や「外部の人材・ネットワークの拡大」(14.8%)については、NPO法人の性質として、市民等の「参加と協力」が不可欠であることから必要となる課題だと考えられます。

■中小企業診断士の支援領域

 企業と同じような課題を持ち、さらにそれ以外の課題まで抱えているNPO法人に対しては、全般的な経営支援を行う中小企業診断士が役に立てると考えます。

 中小企業診断士は経営について幅広い視点で診断・助言することが求められ、支援領域は多岐に渡ります。それを象徴するのが資格試験の科目です。一次試験では、「経済学」「財務・会計」「企業経営理論」「運営管理」「経営法務」「経営情報システム」「中小企業経営・政策」の7科目、二次試験では「組織・人事」「マーケティング・流通」「生産・技術」「財務・会計」の4科目の全てに合格する必要があります。

 つまり、中小企業診断士の特性として、他の士業に比べると個別具体的な支援に特化するよりも、事業を俯瞰的に分析し、全体戦略の策定や必要な専門家の紹介など、ジェネラリストとして経営に必要なサポートを行う点があります(他の士業でも全般的な経営支援を行っている方や、中小企業診断士でも個別具体的な支援を行っている方もいらっしゃいますが、資格の性質として、一般的にはそのような違いがあると考えられます)。

■企業内診断士だからこそできること

 KSF(企業内診断士フォーラム)のメンバーは、企業等に勤めながら中小企業診断士として活動している、いわゆる企業内診断士によって構成されています。企業内診断士の特徴として、経営に関する知識はむろんのこと、本業での経験から、それぞれの業界の知識にも精通していることが挙げられます。しかも、KSFには様々な業種に勤める企業内診断士が集まっておりますので、どの業界であっても、精通した人間を探すことは可能です。NPO法人の場合、オープンイノベーションの観点から企業や行政との連携が重要になることもありますので、お役に立てることもあるのではないでしょうか。KSFには、実際にNPO法人等の経営支援を行っている企業内診断士も在籍しております。

■企業内診断士によるNPO支援

 今回の制度改正を機に、中小企業診断士としてより多くのNPO法人の経営改善を行い、社会課題解決に間接的に貢献していきたいと考える人は増えています。また、中小企業診断士の多くは、経営理念や経営者の想いに寄り添った支援を行うことを大切にしています。経営についてどこから手をつけたら良いのか分からない時の相談先としてKSFを選んでいただければ、適任者を選ぶことができると思います。ご検討いただけると幸いです。

中小企業診断士 佐藤 莉央菜

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